TM017. どこまで自動なのか

サンダーマックスはAlpha-N。一方、ストックECMはSpeed-Densityだという(※)。これっていったい何のこと?

調べてみたら、これらはどちらもEFIエンジンが必要とするガスの混合濃度を正しく測定する手法についている名前だった。もはやハーレーも全てのモデルにEFIが搭載される時代となった。EFIはコンピュータ(ECM)によって制御され、さまざまなセンサーからの信号がECMで正しい燃料量の計算をするための基本的定数として使われている。そのやり方のことらしい。

その点において、サンダーマックスとストックのECMではまるで中身が異なっている。サンダーマックスはアルファNと呼ばれるシステムを採用している。これは主にエンジンRPMとスロットルポジションという2つのセンサーからエンジンの負荷を計算して吸入する空気量を決定する。一方、ストックECMはSpeed-Densityを採用していて、インテークマニホールド内の一定の圧力(MAPセンサーのシグナル)を計算定数として使っている。インテイク内部の圧力が低い場合は負荷が少なく、圧力が高い場合は負荷がたくさんかかっていると判断して必要な空気量を計算するのだそうだ。

これら二つの手法のどちらがどう優れているかという問題は趣味でハーレーに乗る私には難しくて分からない。興味があるのは、サンダーマックスがalpha-Nであれ何であれ、コイツがどのようにして働き、何をしていて何をしていないのかを知りたい。いまさらのことやけど・・・調べてみた。その結果、サンダーマックスは次のような特徴がある。

1.Speed-Densityで最も重要なMAPセンサーをAFR計算のために使っていない
2.その代わりにAlpha-N(RPMとTPS)とO2センサーを使って燃調を自動補正する
3.点火タイミングの自動補正はしない
4.アイドリングは自動補正される

サンダーマックスのAlpha-NシステムはAFR vs. Engine TempやAFR Correction vs. Engine TempなどのマップにO2センサーからのフィードバックを加えて、燃調を行っている。これによって、空気の薄い場所でも砂漠でもAFRは自動補正される。しかし、一方でこれらのテーブルはタイミングの調整には一切関与しない。ってことは、走行時の気温や湿度などの天候条件についてはチューナーが予測して適度手動でタイミング設定に反映してやる必要があるということか。

サンダーマックスは常に自動補正なのだろうか。
どうもそうではないらしい。

1)始動後の30秒はオープンループテーブルを使用している
2)華氏200度になるまでO2センサー(Auto-Tune)が休止している
3)1のあと2の条件下でもIACは補正値を記録する

Alpha-NとO2センサーが特徴のAuto-Tuneとは言え、始動直後と暖機完了までは完全なAuto-Tuneではないようだ。最初の30秒はオープンループ.・テーブルを使う。30秒経ってから暖機が終わる200度まではたとえ高速道路を走っていてもAuto-Tuneは働かない。その間、AFRはクローズトループテーブルを使って過去の学習結果を参照しているが、IACはすでに自動補正で新しいオフセットを記録し始めている。そしてエンジン温が200度に達したところでAFRもオートチューンとなる。新しいカスタムを加えたあとは夏でもゆっくり暖機してからテストランを行ったほうが良さそうだ。

結局、サンダーマックスはECMの仕事の全てが自動になっているわけではない。タイミングについてはまったくの手動だし、暖機が終わるまではO2センサーは働かない。IACはAFRと同じく自動で補正されるが、プロセスとしては異なる条件で別々に動いているようだ。

※ 2001までのMagneti-MarelliシステムのEVOとTwin-CamのFLH、およびBuellのXLエンジンはApha-Nが採用されていた。

次回はサンダーマックス「セキュリティー(鍵)ランプ点灯、これは一体?」です。

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