アンドリュースのカム比較

前回のブログの続きです。

ミントン氏のカムに関するアドバイスは2点。
(1) インテイクバルブを閉じるタイミングが30°前後
(2) ピストンの動きが最も速くなるTDC+76°のときにバルブが0.40インチ開く

これが中低速でトルクを太らせるカムの条件だった。氏いわく、アンドリュースのカタログで該当するものは21Hだけ。しかし実際には3つあった。2010年カタログには09Hと48Hが新しく追加されていた。
(06Dyna, 07以降TC96のチェーンドライブ・カム)

# Grind Timing CL Duration Valve Lift@ Springs
.053 .020 Lift TDC
Stock
06ダイナ
Intake
Exhaust
02/34
42/-03
106
112.5
216
219
256
259
.473
.474
.087
.110
Stock
Stock 07 Intake
Exhaust
-09/25
42/-03
107
112.5
196
219
234
259
.473
.474
.087
.110
Stock
2010
新製品
09H -02/28
40/-04
105
112
206
216
242
252
.492
.486
.075
.075
Stock
21H 10/30
40/08
100
106
220
228
255
264
.498
.498
.134
.121
Stock
26H 11/35
41/09
102
106
226
230
262
266
.492
.490
.138
.120
Stock
2010
新製品
48H 13/29
43/15
98
104
222
238
257
273
.548
.548
.153
.163
Stock

(アンドリュース・プロダクト社2010年カタログから抜粋)

09Hはかなりマイルドな感じが数字から見て取れる。ストックの06ダイナよりも作用角(Duration)が小さい。リフトもあまり差がない。TC96に使うと差があるのかも知れない。

21Hはミントン氏のお墨付き。低回転でトルクが盛り上がるストリート向け。26Hもトルク重視で二人乗りが楽になると評判のカムだが、ミントンさんは「普段使わない5500回転のために低回転域が犠牲になっている」と切り捨ててしまった。

48Hは未知のカムだ。カタログの説明では、「2010年デビュー。ニューデザイン、カムの先端が幅広になっている。ストックのツーリングモデルに最適。中低速で最大トルクを発生する。」となっている。

1)「カムの先端が幅広」 = カムが素早く開き、その状態を長く保てるということか。
2)「ストック」に適合 = 21H同様「ボルト・イン・カム」ということか。
3)「ツーリングモデル向け」 = これは「トルク重視」と見て間違いない。

■ CLとは
カタログの項目に「CL」という列がある。これは「センターラインと読む」と注釈があった。センターラインはピストンのTDC~カムの頂上ポイントまでの角度のこと。

■ インテイクのCL = 小さいほどトルクを生む
v-twinforum.comの記事
によるとハーレーの場合、吸気側のカムのセンターライン(CL)は通常98~106°の間にセットされている。吸気側ではこの数字が98°に近くなるほどバルブタイミングが早まりトルク重視型となる。逆に106°に近づくほど高回転型のエンジンとなる。

■ 排気カムのCL
排気側のカムのセンターラインは通常112~102°の間とされている。排気側ではCLが112°に近いとバルブイベントが早まって低回転型となり、102°に近いと逆に高回転型となると説明されていた。

■ センターラインとオーバーラップの関係
両方のCL(センターライン)を小さい数字にすると結果的にオーバーラップが増える。その結果、高回転で良く回るがその分低速トルクは犠牲となる。吸気と排気を比較すると、吸気側のセンターラインの変更が結果に対してより支配的な影響を及ぼす。

48Hは吸気イベントが21H・26Hよりもすこし早い。よって48Hは21Hよりも更に一層低回転型だと言えるが、オーバーラップが少し幅広となっているので低速トルクへネガティブな影響もある。その分48Hは上にノビるはずだが。。

■ ノーマルカムのCL
両方のセンターラインを大きな数字にすると結果的にオーバーラップがなくなる=ノーマルカム。

■ カタログにない数値「LSA」
LSAはローブ・セパレーション・アングル: 吸気側と排気側のセンターラインがお互いにどれくらい離れているかを示す数字。だがメーカーのカタログには掲載されていない。v-twinforum.comの記事によると、この数値とエンジン特性は以下のような関係になっている。

【セパレーションが狭い=98-103°】
中低速でトルク増大、最大トルクが増大、アクセルのレスポンス向上、狭いパワーバンド、シリンダー圧力増大、ノッキング、始動時の圧縮増、圧縮効率が増大、不安定なアイドル、オーバーラップ増、ピストンとバルブのクリアランスが減少、アイドル時インマニの圧力増

【セパレーションが広い=104-108°】
高回転でトルク増大、最大トルクが減少、広いパワーバンド、アクセルのレスポンスがマイルドになる、ピークパワーの増大、シリンダー圧力減少、ノッキング減る、始動が楽、圧縮効率の減少、アイドル時インマニの圧力減、アイドリングが安定、オーバーラップ減少、ピストンとバルブのクリアランスが増える。

■ LSA(セパレーション) = ( 吸気CL + 排気CL ) ÷ 2
21H = 103°
26H = 104°
48H = 101°

一番低速トルク型なのは48H。その次は21H。26Hはどちらかと言えば高回転型だということになる。

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自分が興味があるのは、右手を捻ればどこからでも駆け上がる低回転の力。これを手に入れたい。“ミントン氏の法則” で言えば21Hが低速域で最も扱いやすそうだと言える。48Hも吸気バルブが30度近くで閉じる。センターラインやセパレーションアングルに目をやってみて、48Hもとても魅力的なカムに見える。

次回は「アンドリュースに手紙を書く」です

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